漫画の概念をも変えた天才漫画家、手塚治虫の作品をご紹介します
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2016/08/02
全国の書店員さんが投票して決める『本屋大賞』。
今年のノミネート作品がついに発表されました!
『i』
西加奈子(著)
ポプラ社
『暗幕のゲルニカ』
原田マハ(著)
新潮社
『桜風堂ものがたり』
村山早紀(著)
PHP研究所
『コーヒーが冷めないうちに』
川口俊和(著)
サンマーク出版
『コンビニ人間』
村田沙耶香(著)
文藝春秋
『ツバキ文具店』
小川糸(著)
幻冬舎
『罪の声』
塩田武士(著)
講談社
『みかづき』
森絵都(著)
集英社
『蜜蜂と遠雷』
恩田陸(著)
幻冬舎
『夜行』
森見登美彦(著)
小学館
今回はこの中から、マーブル読者さんたちに特におすすめしたい5作品をピックアップしてご紹介します。
直木賞受賞作家、西加奈子が全身全霊を込めて描く、力強いメッセージが伝わる1冊。日本や世界で起こっている騒乱やアイデンティティの問題は、すべて他人事なのだろうか。自分の存在の意味を問う、生と死と向き合う傑作です。イラン生まれの作者ならではの作品。
【あらすじ】
「この世界にアイは存在しません。」
高校の数学教師が放った一言は、シリア出身で血の繋がりのない日本人とアメリカ人の両親に育ってられたワイルド曽田アイに衝撃を与える。数学の授業で、教師は虚数のことを言っているだけなのだが、その後もアイの胸にこの一言がずっと残ることになる…。
内省と強い自意識、自分の存在に対する自責。とことん内向きの自分探しの話しに共感出来る年代は過ぎてるんだよなぁ。。。と思いながら読み始めたが、世界中で起きている悲しい出来事、主人公のバックグラウンドの特殊性が、物語のスケールをとても壮大なものにしており、彼女の強さと相まって圧倒される勢いを感じた。読了後、二つの物語を読んだような不思議な感覚を覚えたのは、内向きと外向きの二つのベクトルが物語に見えたからか。そのどちらにも生と死が見え隠れしている。もう一度読んだらまた別の世界が広がる可能性を感じる。
コーヒーを淹れてから、コーヒーが冷めるまでの間だけ許される過去へのトリップ。
不思議な喫茶店で起こった心温まる4つの奇跡の物語です。
【あらすじ】
とある街の喫茶店には、不思議な都市伝説があった。ある席に座ると、望んだ通りの時間に戻れるという。しかしそのためには、たくさんのルールがあって…。
川口俊和 初読み。連作短編集。色々と面倒なルールはあるけど、コーヒーが冷めるまでの少しの間過去や未来へ行ける喫茶店、現実が変わる訳ではないけどほんの少し前向きになれて、優しい気持ちにしてくれる そんな読後感でした。
第155回芥川賞受賞作品。
実は作者である村田沙耶香さん、実際にコンビニで働いているそうで、人気作家になった今でも続けているのだそう。
普通とは何か?それぞれの生き方になぜ他人は干渉するのか?
「普通」ではない人のリアルな物語です。
【あらすじ】
36歳未婚、大学卒業後は就職せず、コンビニのバイトは18年目。
仕事も家庭もある同窓生たちからどんなに不思議がられても、完璧なマニュアルの存在するコンビニこそが、私を世界の正常な「部品」にしてくれる…。
普通が何かわからなくなる作品。とにかく辛い。それぞれに生き方があって、自由だとは言いながらもヒエラルキーが確かにある世界に私たちは生きていて、みんな楽しそうに笑いながらも普通とカテゴライズされる場所にいようとしていて、そうじゃない人を見下している。その構図がすごく見えてとても辛い。個性が認め合える日がくればいいのだろうけど多分来ないんだろうなとも。人に優しくしたいと思った作品でした。そしてコンビニのことをここまでリアルに書いていてただ感動。
冒頭、如何に社会のメカニカルなパーツとして生きているか、と思わせながら実は社会通念のあちら側に居て、そこに気付かず己を貫く。信念なのか、周りが見えていないのか。そんな主人公の生きざまや考え方から透けて見えるのは現代社会への警鐘か、はたまた自己を見失わず生きることへの賛歌なのか。 というのは、ともかく、非常に面白かった。
「食堂かたつむり」の作者が描く、手紙の代筆屋の物語。
読み終わった後、じわーっと心に温かいものが広がるような一冊。
優しい気持ちになります。
【あらすじ】
鎌倉の山のふもとにある小さな古い文房具屋さん「ツバキ文具店」。店先では祖母から受け継いだ孫娘の鳩子が、手紙の代筆を請け負っている。そんな彼女の元には、今日も風変わりな依頼が舞い込んでくる…。
祖母から継いだ鎌倉にある文具店兼代書屋さんで働く鳩子のお話。鎌倉の街並みや季節、個性的なお友達、ゆったりとした空気感、すごく良かった。また筆記具や用紙、切手にまでこだわり、毎回別人が書いたような手紙が書ける代書屋さんって本当にすごい。続編希望です。
今、余韻に浸っています。静かで穏やかで、盛り上がるような場面はないのに、なぜか引き込まれました。今は、メールが主流なのでしょうが、やはり、手紙というのは心に響きますね。今までは、手紙は、下手な字でも自分で書いてこそ意味があると思っていましたが、代書というのも悪くないですね。鳩子と祖母の間に確執があって、鳩子はそれを抱えていたけれど、最後に気持ちの整理がついて良かったです。悪意ある登場人物も出てこず、爽やかで、温かな気持ちで読了しました。お隣さんの、「キラキラ」のおまじない、私も真似しようと思いました。
鎌倉は出掛けた事がないけれど…なんだか目に浮かぶ気がするほど、風景描写が美しい。文具店に集う人々もまたなんて優しい人ばかりなんだろう。文具店先代としこりのあったポッポちゃん。人情味の溢れる人々と接していくなかで、少しずつ今は亡き先代とのわだかまりがとれていく様子は、ちょっぴり胸をうつ。なんだか手紙の大切さを再確認。誰かに…手紙を書きたい…古めかしい趣のある文具店はなんだか…近くにありそうな気がする。見つけたら、思いきって入ってみたい。
昭和から平成、塾業界に人生を捧げた親子三世代のお話。
時代に翻弄されながらも、希望と情熱をもって生きる姿に心が熱くなるはず。
【あらすじ】
小学校用務員の大島吾郎は、勉強を教えていた児童の母親、赤坂千明に誘われ、ともに学習塾を立ち上げる。女手ひとつで娘を育てる千明と結婚し、家族になった吾郎。ベビーブームと経済成長を背景に、塾も順調に成長してゆくが、予期せぬ波瀾がふたりを襲い…。
塾を舞台にした親・子・孫と三代にわたる人間模様。物語の最後を飾る頼りない平成っ子の成長がいちばん好きでした。本文中に出てくる「生きる力」ということばが印象的。これからは「生きる力」を育てることが大切でしょう。本文はもちろん、装丁、装画も素晴らしいです。
読み終え、とても満ち足りた気持ちになりいました。心は満月です。トントンと進む物語は、作られたものでありながら、登場する人々が自然に物語の中で、考え、息づいているように感じました。教育という舞台だけに、時に、自分自身の経験を重ねることができるのも良かったと思います。烈しさも、優しさも、教育の前では、純粋さゆえのものでなければいけないんだとも感じます。終盤の直哉の物語には、声が出そうなくらい涙が溢れてきました。
傑作揃いの「本屋大賞」ノミネート作品。
大賞は4月に発表です。どれが選ばれるのか、今から楽しみですね。
あなたが賞を選ぶなら、どの作品?
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