kiyo_7
2015/10/09
1986年神戸市生まれの詩人、小説家。第44回現代詩手帖賞、第13回中原中也賞受賞。
自身のブログ、ツイッター、Tumblr、インスタグラムなど積極的にSNSをつかって詩を発表しています。その鋭くもやさしい言葉が若者の心を掴んで話さない、今話題の詩人です。
"きみに会わなくても、どこかにいるのだから、それでいい。みんながそれで、安心してしまう。水のように、春のように、きみの瞳がどこかにいる。会わなくても、どこかで、息をしている、希望や愛や、心臓をならしている、死ななくて、眠り、ときに起きて、表情を作る、テレビをみて、じっと、座ったり立ったりしている、きみが泣いているか、絶望か、そんなことは関係がない、きみがどこかにいる、心臓をならしている、それだけで、みんな、元気そうだと安心をする。お元気ですか、生きていますか。きみの孤独を、かたどるやさしさ。
「彫刻刀の詩」最果タヒ
今回ご紹介するのは、最果タヒさんファンが絶賛する『死んでしまう系のぼくらに』
誰もが抱える孤独やら恋やらの複雑な感情を、彼女らしい鋭くも叙情的な言葉で綴る、書き下ろしを含む44編を収録した一冊です。
死者は星になる。
だから、きみが死んだ時ほど、
夜空は美しいのだろうし、
ぼくは、それを少しだけ、期待している。
きみが好きです。
死ぬこともあるのだという、
その事実がとても好きです。
「望遠鏡の詩」より抜粋
"私は美しいことを言えない
美しい顔を持たない
美しい服は似合わず
あなたに美しい感情を抱かない
ただ、あなたが二十年ほど前どこかの病院で生まれ
家族や友人に愛されてきたこと
それを推し量ることが出来る
私の人らしさはそこにしか無いのです
「花束の詩」最果タヒ
タヒさんの詩は、頭で考えるのではなく心と体で感じるもの。
苦しいくらいありのままの感情をぶつけた詩たちに、
共感の声が次々と寄せられています。
最果タヒさんの本は初読み。言葉ひとつひとつがタヒさんの言葉で。一文読むたびに自分のなかで自分の言葉に変えて、理解し想像していかないと言葉が通り過ぎていってしまう。難しい詩ではないのに、なんだか不思議と頭をつかった。最後の「あとがき」を読んで、私が感じたことの正体が分かったようで嬉しい。これは、やはりタヒさんの言葉で私の言葉はまた別にあるんだろう。タヒさんのエッセイ本も読んでみたい。
ひとりからひとりへとあてどもなく漂っていく言葉。言葉が持つ推進力や広がり、自由さを感じさせます。ずっと誰かに言ってほしかったこと、本当は自分が言いたかったことを、書いてくれてどうもありがとう。
最果タヒ『死んでしまう系のぼくらに』
¥1,296(税込)
自分の心の動きを噛み締めながら読みたい本です。
どの詩ももちろん心を動かされるのですが、”あとがき”にも注目です。
「あ、この言葉を探してた。」がいくつもある一冊。ぜひ手に取ってみてくださいね。
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