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    舞台やオペラ上演多数!不朽の名作「椿姫」、そのあらすじは悲恋物語

    不屈の名作椿姫は恋の物語です。原作では報われない最後を迎えますが、オペラや演劇ではクライマックスには別の演出がされています。100年以上経った今でも愛されている原作、椿姫のあらすじを確認しながら、多く上演されているオペラのあらすじとの違いもご紹介します。

    不朽の名作椿姫とは?

    「椿姫(原タイトルLa Dame aux camelias、椿の花の貴婦人)」は、1848年にアレクサンドル・デュマ・フィスが書いた長編小説です。作家自身の実体験を基にして書いたと言われています。

    かつてデュマが交際していた、マリー・デュプレシという高級娼婦が主人公マルグリットのモデルです。椿姫は、小説発表後デュマ自身により戯曲も書かれました。

    実体験を物語るようなあらすじや、登場人物恋人アルマンのイニシャル「AD」がデュマのイニシャルと同じなど作品に思い入れが詰まっています。椿姫の作品は人々に愛され、幾度も舞台化、オペラ、バレエ、映画化され続けてきました。

    椿姫の舞台化

    デュマ自身によって椿姫は1849年に戯曲化され、翌年1850年に上演され大成功を収めました。以後歴代の女優により現在まで上演され続けています。

    椿姫は長編小説の発表以来、多くの小説や戯曲版を原作として、オペラ、バレエといった舞台芸術や映画なども生まれています。

    椿姫のオペラ化、La traviata(ラ・トラヴィアータ:堕落した女)

    戯曲の椿姫を観たジュゼッペ・ヴェルディにより、1853年オペラ版椿姫が発表されました。原タイトルは「堕落した女」La traviata(ラ・トラヴィアータ)、直訳は「道を踏み外した女」でした。

    日本では原作の小説椿姫と同じ、La Dame aux camelias(椿の花の貴婦人)のタイトルで上演されることのほうが多くなっています。

    オペラの椿姫は3幕から構成され、有名な歌曲を世に出しました。原作の小説を基にフランチェスコ・マリア・ピアーヴェが台本を手がけています。

    原作の椿姫は長編小説ですが、オペラ椿姫ではあらすじも脚色され、主要なエピソードでドラマチックな構成に仕立てています。

    あらすじにある悲劇を音楽的表現では、舞台を盛り上げる明るさや華やかさ、力強さを失わないヴェルディの特徴が如何なく発揮され、多くの人々に支持されています。

    残念ながら初演はあらすじの内容や娼婦がヒロインということで、上演が道徳的な観点から問題視され許可がなかなか下りない事態を招きました。

    準備不足で初演となった椿姫、初演は失敗に終わります。今では有名なオペラとなっている蝶々夫人やカルメンと並ぶ3大(初演が)失敗作と言われています。

    椿姫の主な登場人物

    当時問題視された高級娼婦椿姫、ヒロインを含む主な登場人物は、以下の通りです。
    ・マルグリット・ゴーチェ(オペラ:ヴィオレッタ・ヴァレリー)
    ・アルマン・デュヴァール(オペラ:アルフレード・ジェルモ)
    ・父親デュヴァール氏 (オペラ:ジョルジョ・ジェルモン)

    椿姫のあらすじ上鍵になる脇役たち
    ・マルグリットの友人の娼婦(オペラ:フローラ)
    ・マルグリットのパトロン(オペラ:ドゥフォール男爵)
    ・マルグリットの最期を看取る召使(オペラ:ナニーヌ)

    原作椿姫のあらすじ

    原作の椿姫のあらすじを追いつつ読んでいくと、最初の部分の「私」、続いて「ぼく」と語り部が変化する手法が用いられています。

    原作椿姫のあらすじ(高級娼婦の競売かけられた遺品)

    原作のあらすじは著者の一人称で始まります。元高級娼婦で、最後は借金まみれで亡くなった女主人の家の競売から展開されます。この始まり方は、その後の物語のあらすじが暗いものを暗示しています。

    著者は競売に参加し、亡くなったマルグリットの持ち物の中から一冊の本を競り落とします。この本は皮肉にもマノン・レスコー、あらすじは育ちの良い優秀な青年と豪華な生活のためなら娼婦まがいなことも辞さない女性の物語です。

    そのうち、本を競り落とした著者をアルマン・デュヴァルという青年が訪れます。アルマンが、マルグリットにマノン・レスコーの本を送った人物として描かれています。ここからはアルマンが著者にマルグリットとの話をする形で、あらすじが過去のエピソードへと移ります。

    原作椿姫のあらすじ(時代背景と主人公の人物紹介)

    語られ始めたマルグリットとの物語のあらすじは、一人称がアルマンに変わりアルマンの独白として進んでいきます。

    いよいよ椿姫と称されるマルグリットとのエピソードが始まります。
    2人の出会いのあらすじが始まる前に、マルグリットの人物像と時代背景をかいつまんで説明されています。

    時代は19世紀半ば、原作の小説の書かれた年代の設定です。この当時のパリの裏社交界は、高級娼婦たちが若さと美貌を武器に身分の高い男性からお金を吸い上げ派手な生活を送っていました。

    ドレスの胸に、看板替わりに白と赤の椿を使い分けて登場するマルグリットが椿姫のタイトルの由来です。椿姫は、派手で騒々しい享楽にふける高級娼婦の中でも群を抜く美しさで、金遣いが荒い女性として名を馳せています。

    一方派手な生活の中で、肺病を患い余命が長くないことを自覚しているマノンには暗い影が付きまといます。(宗教上娼婦は)罪深い女として救いを求めながらも叶わない状況に、放漫な生活で気を紛らわせ病状を悪化させています。

    原作椿姫のあらすじ(マノンとアルマンの出会い)

    享楽の日々に浸る椿姫ことマルグリットは、アルマン・デュヴァールという青年に出会います。彼はマルグリットの身体を本気で心配し、心からの愛を告白します。徐々にマルグリットは心を動かされ、アルマンを商売抜きの愛人にします。

    世間知らずで純粋なアルマンは、贅沢のために身を売ることを辞めない椿姫マルグリットとその周囲と摩擦を起こます。マルグリットは一途な愛を寄せるアルマンを次第に愛していきます。

    マルグリットはパリでの贅沢な生活と高級娼婦を辞めパトロンたちと手を切り、郊外でアルマンとの慎ましい生活を残された人生で送ることを決心します。

    原作椿姫のあらすじ(恋の行方と破たん)

    椿姫のハッピーエンドに水を差したのがアルマンの父親の登場です。父親は息子に知られないようマルグリットを訪れ別れる様説得します。

    「どんなに二人の愛情が本物で、あなたが改心したとしても、一度(娼婦に身を落とした)道を踏み外した女を世間は許さない。息子を本当に愛しているというのなら、今のうちに別れて欲しい。」

    父親の説得に応じたマルグリットは、アルマンの将来を思い最後の生きる希望だった愛の生活をあきらめて身を引きます。

    原作椿姫のあらすじ(別離後)

    パリに戻ったマルグリットは、生活のために新しいパトロンを作り高級娼婦の椿姫に戻ります。何も事情を知らないアルマンは、裏切られたと思い込み彼女を激しく非難し屈辱を与えるような所業をし、癒せぬ心を抱いたまま外国へ旅立ちます。

    誤解したまま外国へ去ったアルマンを思い、深く傷ついたマルグリットはどんどん病状を悪化させ死の床につきます。世間からも忘れ去られ、誰からも見捨てられますが心中はアルマンへの愛で穏やかに満たされていました。

    死期を悟った椿姫マルグリットはいつかアルマンが別れの理由を知る事を願い、手記を書き残し自分の死後アルマンに渡るよう友人に託します。

    やがてマルグリットの危篤を知ったアルマンは、急いでパリへ向かいますが間に合わず、マルグリットはアルマンへの愛を唯一の希望として孤独に短い生涯を終えます。

    やがてマルグリットの危篤を知ったアルマンは、急いでパリへ向かいますが間に合いません。原作椿姫のマルグリットは、アルマンへの愛を唯一の希望として孤独に短い生涯を終えます。

    原作と異なる演出オペラ椿姫のあらすじ

    オペラでは原作の「椿の花の貴婦人(椿姫)」というタイトルを使わず、「道を踏み外した女、堕落した女」を意味する「トラヴィアータ」というタイトルで上演しています。

    ヒロインの名前も椿マルグリットから「スミレ」を意味するヴィオレッタ、恋人の名前はアルマン・デュヴァルからアルフレード・ジェルモンに変更されています。

    原作椿姫とオペラ椿姫の違い

    原作椿姫のマルグリットは職業の娼婦を恥や罪の意識を感じさせず、誇り高い女性として描いています。アルマンの愛を受け入れた後も、現実問題生活のためパトロンと折り合いをつけています。

    世間知らずなアルマンは、それを理解できずに嫉妬心と恋心で苦悩し、衝動的に駆られて彼女を攻撃し酷く傷つけていきます。

    オペラでは、原作椿姫より二人の純愛がクローズアップされアルフレードノ父親と対決シーンで現実との葛藤が最もドラマチックで聴き処になっています。

    父ジェルモンは当時の一般的で保守的な良識を持つ人物で、多少偽善的で世間的には善人に描かれ、息子は単純で若く激情を抑えられない青年として登場しています。

    死期の迫ったヴィオレッタの元に、アルフレードが戻り最後を看取ります。アルフレードに自分の肖像を託し、「いつか良い女性が現れてあなたに恋したら、これを渡して欲しい。」と頼みます。

    現実には、一人寂しく死を迎えたデュマ・フィスの恋人や原作椿姫のマルグリット。オペラでは最後に再会し恋人とその父親に看取られて亡くなります。クライマックスを盛り上げるためと、ヴェルディの恋人(歌手で未婚の母)に気を使ったともされています。

    原作では重要な鍵となる、マルグリットの墓を著者とアルフレードが暴く場面や、バレエをに描かれた最大の見せ場はオペラには出てきません。

    椿姫の小道具「マノン・レスコー」のあらすじ

    アベ・プレヴォーの作品で、椿姫ではアルマンがマルグリットに贈った本として登場します。どちらのあらすじも高級娼婦と身分のある若い男性の恋、自堕落で娼婦まがいな女性と名門子弟神学生の恋と表面上は似ています。

    マノン・レスコーのあらすじは、出会いと駆け落ち、性懲りもなく繰り返す自堕落生活、マノンアメリカへ流罪追いかけるデ・グリュー、マノンの死とデ・グリューの生還に分かれます。

    出会いと駆け落ちでは、マノンはデ・グリューと駆け落ち後「金の切れ目が縁の切れ目」と言わんばかりにパトロンを作り、邪魔になった駆け落ち相手を実家に密告して離別するという悪女ぶりが際立っています。

    マノンは家へ連れ戻された後神学校で修業中のデ・グリューを再び訪れ、よりを戻してほしいと懇願します。しかし性懲りもなく繰り返す自堕落な生活、金銭面で困窮するとマノンはパトロンのところへ、デ・グリューはいかさま博打に手を出し転落していきます。

    デ・グリューは感化院に送られ、マノンは娼婦などを収容する施設へ送られます。その後感化院を脱走しマノンを救出したデ・グリューでしたがマノンは宝石につられまたデ・グリューを裏切ります。とうとうマノンは所業によりアメリカへ流刑、デ・ギリューは父親の尽力で流刑は免れます。

    アメリカへ流罪されたマノンを追って、すべてを捨てて渡米するデ・グリュー。貧しい生活ながら幸せな時を過ごします。しかし、マノンに横恋慕する有力者の甥とトラブルになりイギリス領へ逃亡する羽目になります。

    厳しい逃亡の中でマノンはデ・グリューに感謝しながら絶命します。残されたデ・グリューはマノンの墓で死を待ちますが、捜索隊により救出されフランスへ帰還します。一人の女性に巡り合ったために、振り回されっぱなしの人生になってしまっうあらすじです。

    椿姫とマノン・レスコーのあらすじは駆け落ち(隠遁生活)、別れとパターンは似ています。しかし強烈な個性のマノンと、何度も苦い目に合うのに懲りないけなげな青年は、椿姫のふたりとは異なるキャラクターです。

    椿姫を楽しむ上で小道具に使われた小説の内容のあらすじだけでも知ると、贈り主の意図や性格、時代背景などがわかって新たな視点に立てます。

    おわりに

    自堕落な生活に溺れていた高級娼婦でありながら、純真な愛に目覚めていく一途なヒロインと、育ちがよく心の機微を理解できない未熟な青年の恋物語椿姫のあらすじ。

    原作、オペラのあらすじの違いと、小道具に使用された小説のあらすじをご紹介しました。椿姫を初めて読まれる方のご参考に、既読で読み返す方も違った角度で楽しむ参考になれば幸いです。

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